本人が気付かない可能性を引き出す。ライフコーチ・上野ハジメさん。

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例えば、何の制約もないとしましょう。5年後、10年後、どのような毎日を送っていたいですか? 深く自分自身を見つめれば、想像したこともない自分が、自分の中に潜んでいるかもしれません。そのような「本人も気づいていない可能性」を引き出し、後押しをする仕事、「ライフコーチ」として活動する上野ハジメさんに話を聞きました。

自分自身を

 「開発」し続ける

 

ーー 「ライフコーチ」。聞き慣れない言葉ですね。

 日本では、まだ知られていないかもしれませんが、アメリカ人にとってはとてもポピュラーです。スポーツにおける「コーチ」と同じで、そのコーチングのフィールドが「ライフ(人生)」である、と言えばわかりやすいでしょうか。

 

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ーー どのような人がつけているのですか?

 アメリカの成功している人は、たいていライフコーチをつけていますね。経営者やトップクラスの俳優、政治家などは特につけている人が多いと思います。コンサルタントと似ているようだけれど、少し違いますね。コンサルタントは、人の心理やモチベーションのスペシャリストとして活動しますが、その人が持つ潜在的な能力を引き出す、その人のブロックになっているところを見つける、いっしょに行きたい方向を見つける、そして後押しする。それがライフコーチです。

 

ーー なるほど。

 スポーツと同じです。自分ではわからないフォームの乱れを指摘してもらったり、トレーニングプランを見てもらったり。自分でやってできる人もいるかもしれないけれど、きちんとしたコーチがいる方が成長が速い。人生においても、そういう人がいると、成長のスピードが違うと思いますね。

 

ーー 上野さん自身も、ライフコーチをつけていたそうですね。

 そうです。今、私は52歳なのですが、45歳のときに1年半くらいお願いしました。あの1年半は、私にとって本当に有意義でした。自分を何倍にも成長させてもらいましたね。忘れていたことを思い出させてくれたり、自分が無理だと思っていることを実行するきっかけをもらったり…。英語では「self development」というのですが、「自分」というものは、「開発」していかなければいけないものなんだ、ということを教えられました。

 

 

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自分を見つめ、解放し、

 そして、ライフプランを作る

 

ーー 具体的には、どういうことをするのですか?

 私の場合には、月に2回、2時間くらい会って話をしました。ライフコーチが最初に持ってくるのが「ライフプラン」。何歳のときにどうなっていたいか、という自分の理想のライフを年表にしたようなものですね。いきなり来て、「さあ、これを埋めてみましょう」と。

 

ーー どうでしたか?

 これが、全然できなかったのです。「自分は何も考えずに生きてきたのか」とショックを受けましたね。ライフコーチは、このライフプラン作りを軸にしながら、「自分の人生」がどんなものなのか、というのを見い出させるのです。何の制約もないとして、「あなたはどうしたいのか」と問われ続けるのです。そうすると、ポツリポツリと出て来るようになる。「場所と時間が自由になる仕事がいいな」とか、「子育てもしてみたいな」、「世界を旅して暮らしたいな」とかね。当時、私はハワイに住んでいたのですが、本当はもうそろそろハワイを出てより広い世界で自分を試してみたいんだ、ということにも気がつきました。

 

ーー 次は、どうするのですか?

 まだまだ、問いは続きます。例えば「こうしたいけれど、ちょっと無理だなあ」と言うと「なぜ?」。「これとこれは両立できないよなぁ」と言えば、「どうして?」…。結局、自分の可能性を信じていないというか、自分で自分にフタをしてしまっているんです。ライフコーチに、「なぜ」「どうしてそう思うのか」と問われ続けると、それまでの自分の枠組みがどんどん崩れていって、最終的には「何でもありなんだ」と気づかせられました。

 

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「今」こそ

 始めるべきとき

 

ーー ライフプランは、何歳まで作るのですか。

 私の場合には、120歳まで。最初は、80歳くらいでやめたのですが、するとコーチに「なぜ?」って。

 

ーー 120歳ですか…! 

 今、女性でいえば、平均年齢は87歳。この数字は、あくまでも平均だから100歳まで生きる人もどんどん増えています。とすると、50歳なんて、まだまだ半分。日本では、40歳を過ぎると、自分で自分を区切ってしまう雰囲気がありますが、アメリカはそうではありません。50歳から、あるいは仕事を引退してから学校へ行き直す人も多くいます。あと50年ある、ということは、もう一度生まれ直しても50歳まで生きられるということ。そう考えれば、いつでもゼロからスタートできるし、「今」こそ始めるときだと思いますね。…とはいえ、私のライフプランも、120歳まではきちんと書けていません。想像が難しいのです(笑)


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ーー  なぜライフコーチという存在が良いのでしょう?

 ライフコーチは、対話を通じて、人それぞれのモチベーションの源を理解し、可能性を限定する考え方の癖を発見するトレーニングを積んだスペシャリストです。まずは心のブレーキを解き、自由な発想ができるように導いて行くことがセッションの第一段階。その後、どんどん潜在意識の奥底まで開いていって、その人が本来、実現したかった夢を一緒に見つけ出し、達成できるようにアシストします。常識から解き放たれて、本当に自分が生きたかった理想の人生を歩み出すことで、人は本当にキラキラと輝き出すんですね。この仕事をして良かったなあと実感できる瞬間です。

 

ーー  身近な人をメンターとするのとはどう違うのでしょうか?

 尊敬する人をメンターとして敬うのはとても良いことだと思います。ただし、親や友人、学校の先生や上司などが代表する「世間の声」が、人の可能性を縛っていたり、あるいは彼らとの過去の葛藤がブレーキになったりしているケースも多いんですね。第三者として、中立的な立場でガイドをするプロのコーチの存在理由もそこにあります。

 

ーー  上野さんの日常を教えてもらえますか。

 ライフプランを作ってみて考えさせられたことのひとつに「健康」が挙げられます。作ったプランを実現するには、健康は不可欠ですから。なので、食事はヴィーガンです。マクロビオティックを取り入れて、大半は自炊をしていますね。また、朝も早いです。私自身は4時半起床。パートナーが7時に起きますから、それまでの時間が自分のゴールデンタイム。最初は5時くらいだったのですが、その時間が楽しくなって、自然と早くなりました。アメリカ、特に私が暮らすハワイやロサンゼルスは、健康志向の高いエリアなのです。スポーツジムはたいてい24時間オープン。出勤前の6~8時が最初のピークタイムですし、スーパーマーケットも、意識の高い人は皆、自然食品系の専門店に通います。「健康」「きれい」「若々しく」「充実した毎日」、ということをとても大事にする人たちが集まっています。長時間に渡る残業をしなくて良いように仕事をコントロールし、家族や大切な人との意義ある時間をしっかりとろうと努力しますね。

 

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ーー  マラソンもされますよね?

 16年くらい前にホノルルマラソンに挑戦したのをきっかけに、25回くらいフルマラソンを走っています。ベストは、2年前に出した3時間38分。私の年齢だと、3時間30分を切るとボストン・マラソンの出場資格が得られるので、今はそこに挑戦中です。あと、今年から始めたのがトライアスロン。経営者仲間が皆やっていて、楽しそうだなあと思っていたのですが、やっと時間が自由に使えるようになったので、5月にホノルルで初挑戦。もう想像以上に楽しくて、すっかりはまっています。

 

ーー  「自分」のために大切にしていることはありますか。

 「インプットとアウトプットの習慣」でしょうか。良い考え方を自分の中に取り入れて、それをまた周りに伝えるのです。これは、メンタルの面でとてもいい習慣だと思っています。そうしていると、不思議なことに、周りにも良い考えの持ち主が集まってきます。誰と過ごすかはとても大切なことです。自分にいい影響を与えてくれる人のなかで暮らせるようにすることこそ、人生を良い方向に「開発」するためのポイントといえると思います。

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文=清塚あきこ 撮影=大島拓也 場所=oinai karasuma

2014年10月15日